水の容器と本

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 柔らかい雨に包まれて紫陽花が咲きました。紫陽花は英語では水の容器という意味。なんとなくそそる名前ですね。妄想が膨らみます。
 
 窓の水滴を眺めていたら柄澤齊さんの「水の本」という1枚の作品を思い出しました。水滴が文字のように並んでいる木口木版の作品。
 博識な大人のバックボーンで支えられた子供のように軽やかな発想を息を飲むような技術でさらりと表現される姿に惚れ惚れ。本や文字で表された物語や神話伝説宗教など人間の思想が版画のかたちを借りて一目で飛び込んできます。高校生の頃から変わらない憧れの作家です。
 幸運にも学生の頃に1日だけ大学に公演会でいらしたことがありました。本と版画について、どちらも個人で収集して掌で愛する事ができるものなのだとおっしゃり、自分が出版される本や版画にこだわるのは手から手へ渡るものをなくさないためのある種の抵抗なのだと熱く語られていました。
 
 見えない妄想を他者の目にもありありと見えるようにできるのが優れた作家の条件のひとつだと思いますが、思想を表現するために練られたイメージと完璧にコントロールされた手から生まれる作品は、まるで生まれたばかりの初々しさと神秘を纏い、拙さいやらしさ重苦しさとは無縁。イメージとテクニックが深い場所で結ばれているように感じます。作品と作者のこういうふうな結びつきというものがあるのかと今でも印象に残っています。

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