今年もリトルクリスマス版画展が始まります。準備は暑い時期から進めていて、9月に作家たちの新作が集まり、それをボランティアの作家が1点ずつ梱包してようやく全国の画廊へ旅立ちます。10回の企画なので、だいぶ終わりに近づいて来ました。
毎年のことで、複数枚刷ることはすっかり慣れました。刷った作品をどうすれば色んな場所の方々へと届けられるか、という工夫をしながら月日が経ちます。
作り手には色んなスタンスの人がいますが、私は、作品を作るだけの「作者」から、作って届けることで社会的な「作家」になりたい、という思いが常にあります。これは先輩作家にも時々言われたことで、心に残った受け売りを自分なりに考えたものです。
「作者」は、自分とモチーフ、作品の三角形が問題の全てです。それはたっぷりと味わってきましたので、その良さは重々承知なのですが、「作家」には更にそこにもうひとつ視点が加わります。それが他者です。「作者」の意識のみの人には、実は展覧会がそれほど大きな意味を持ちません。というのも、飾る前から、ほぼ自分の仕事は終わったような感覚で心が満たされ、一息ついてしまうのです。そういう日々への懐かしさは感じつつも、やはり心がそれでは満たされなくなったというのが本当のところです。勿論経済上の現実もあるのですが、それは同時進行の課題であり、それよりも実際は、納得したいという部分の方が行動に駆り立てているように思います。
16歳の頃に美術部で制作した作品を、部活と関係のない場所で飾ってみたい、どのような反応があるのか知ってその中で作品をもっとたくましいものにしたい、という思いを抱いてからというもの、方法は変われど、根本は変わりません。
さて、そんな思いで発送した作品、各地で出会いがあると幸いです。行ってらっしゃい。